学年は違うけれど、向日先輩とは部活が同じで、ほぼ毎日会える。登下校も一緒にすることが多い。
それでも。休みの日も一緒に過ごせるのは、やっぱり特別で。次のデートが決まった日から、嬉しくて嬉しくてたまらない。
『悪い!寝坊した!ちょっと遅れる!』
だから、逆にこんなLINEひとつで、一気に不機嫌にもなる。
・・・・・・私は楽しみにしてるのに。少しでも一緒にいられたら、って思ってるのに。
でも、だからこそ、なるべく喧嘩はしたくない。
『気を付けて来てくださいね』
「了解」というスタンプとともに、そんな言葉を返したけれど、納得しているわけじゃない。
先輩を待つ間に、マイナスな考えがぐるぐる浮かぶ。
先輩は楽しみじゃなかった?一緒にいたいと思われてない?
「ごめん・・・・・・!!」
でも、向日先輩の姿が見えた瞬間、そんな考えは吹き飛んでしまう。
だから、そんな申し訳なさそうにしないでくださいね。
「お詫びは何にしましょうか?」
「うぅ・・・・・・。マジでごめん・・・・・・!!」
「ふふっ、冗談ですよ。気にしないでください。」
「いーや、気にする!今日一日、には『楽しい!』って気持ちでいっぱいにさせてやりてぇのに!」
それに、ほら。向日先輩は、こんなにも私のことを思ってくれてる。
マイナスなことを考えたって無駄なだけだったんだ。
「そう言ってもらえるだけで、『嬉しい!』って気持ちでいっぱいです。」
「あー、もう!ホント、お前には敵わねえよ・・・・・・。とにかく、こっから挽回すっから!楽しみにしとけよ?」
「はーいっ。」
「ん、いい返事。」
向日先輩は満面の笑みを向け、私の手を掴んだ。
そのまま手を繋ぎ、先輩に連れられた先は、水族館だった。
先輩は羽のアクセサリーが好きだったりするから、どちらかと言えば、水族館より動物園の方が好きそうだけど・・・・・・。
「先輩、水族館好きでしたっけ?」
「別に嫌いじゃねえよ?でも、意外だったか?」
「はい、そうですね・・・・・・。」
「は?もしかして、水族館、嫌だったとか・・・・・?」
「いえいえ!そんなことないですよ!」
「よかった・・・・・・。じゃ、行こうぜ!」
もしかして、私のために、水族館にしてくれたのかな?
本当はどっちだっていいのに。向日先輩といられるのなら。
「――先輩、見てくださいっ!」
「おぉ。結構な数のペンギンが並んでんなぁー。」
「順番に水に飛び込んで行ってて、可愛いですよねー!」
「いや、でも、あそこにボーッとしてるやつもいるぞ。・・・・・・ジローみてえだ。」
「ホントですね。あの子も眠たいんでしょうか。」
「じゃあ、あの高い所にいるやつが跡部で、近くの・・・・・・あいつが樺地だな。あいつがそろそろジローを起こしに行くんじゃね?」
「じゃあ、向日先輩はどの子ですか?」
「そりゃあ・・・・・・あの泳ぎが1番上手いやつだろ!」
そう言った先輩の笑顔を見ていると、心の底から楽しいって思う。
この楽しいって気持ちを何か形に残したくて、お土産コーナーで真剣に吟味していた。
「何か買うのか?」
「そうですね・・・・・・。せっかく先輩と来たので、何か記念に・・・・・・。」
「すっげぇ悩んでる。」
「先輩を待たせないよう、なるべく早く決めますね!」
「いいって、いいって。存分に悩め。」
先輩は笑顔でそう言いながら、一緒にお土産を見てくれた。
「これなんかいいんじゃね?ここ限定、って書いてあるし。」
「やっぱり、限定がいいですよね。」
「だな。ここに来た!ってわかるしな!」
できれば、向日先輩と来た!ってこともわかる物がいい。
二人にとって印象に残ってそうな・・・・・・。
「あ。これ・・・・・・。」
「ペンギンのストラップか。しかも、水族館の名前が入ったプレート付き!」
「テニス部みたいな子たちがいましたからね。これにしようかなと思って。」
「いいんじゃね?つーか、が買うなら、俺も買っとくか!」
「え・・・・・・。」
「お揃い!いいだろ?」
「はいっ、もちろん!!」
さらにお揃いだなんて。
これほど素敵なお土産はない。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、先輩と別れる時間になってしまった。
寂しくないことはないけど、でも、今日二人で楽しめたことが何より幸せ。
「先輩。今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです!」
「おう!そりゃよかった。俺も楽しかったぜ!ありがとな。」
「また、部活で!」
「ああ、またな!」
それでも、離れがたくて、何度も何度も振り返りながら、先輩に手を振った。
先輩が見えなくなりそうになった、そのとき。
「っ!」
いわゆる前方不注意で、少しつまずいてしまった。
・・・・・・恥ずかしい。先輩に見られたかな?
急いで先輩の姿を探したけど、もう見えなくなっていた。
少し寂しいような、でも見られなくてよかったと一安心していると、スマホがLINEを知らせた。
『気をつけろよ(笑』
相手はもちろん向日先輩で。
見られてたんだ・・・・・・!という恥ずかしい気持ちと、でも、こうして気にかけてくれてることが伝わるとやっぱり嬉しくて。
本当、帰るときまで「嬉しい」って気持ちでいっぱいですよ、向日先輩!
向日さんのお誕生日には間に合わなかったー・・・!すいません!
でも、まあ、お誕生日ネタじゃないので、許してください!
とりあえず、今回のテーマは「LINE」!「メール」じゃなくて「LINE」って書いてみたかったんです(笑)。
というわけで、メールと言えば!向日さん!となって、今回のお話ができました(笑)。
('19/01/03)